ピロリ菌除菌のご案内
ピロリ菌除菌に保険適用 胃ガン予防に効果
ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌) 除菌療法の保険適用が「内視鏡(胃カメラ)検査において胃炎の確定診断がなされた患者」も対象患者として追加されました。
注意点は、これまでの対象患者に胃炎の患者が追加されたが、胃炎であっても保険適用での除菌には、胃カメラによる診断が必須とされていることです。
豊中診療所でピロリ菌感染の診断は血液や便検査でできます。ピロリ菌感染陽性と診断された患者さんは胃カメラ検査をうけていただき、胃炎と診断がつけば保険適用で除菌治療ができます。胃カメラは完全予約制で毎週木曜日午後と毎月1回日曜日午前で実施しています。検査当日までに同意書のための診察が必要です。
大阪のある生協病院では2年間に96例に除菌実施しうち92例で除菌を確認(除菌成功率 95.83%)、除菌に用いた薬剤で軟便などの他は特記すべき重篤な副作用は認めなかったということです。
胃がんの発生はおよそ3分の1に減少することができるとされています。また、ピロリ菌除菌後の胃検査の定期的なフォローも重要です。その他不明な点がありましたら、お気軽に豊中診療所までお問い合せください。
機関紙「かけはし」2013年3月号より
中塚所長のコラム「健康への道しるべ」より~ピロリ菌除菌療法の保険適用が拡大~
今回のテーマ「ヘリコバクタピロリ菌除菌療法の保険適用拡大」です。今回はこれにちなみ、ピロリ菌に関する知識のおさらいもしてみようと思います。通称ピロリ菌と称されるのは「ヘリコバクター・ピロリ」という名称の細菌で、1983年にオーストラリアの二人の研究者によって培養に成功されたものです。「ヘリコ」はらせん、「ピロリ」は胃の出口=「幽門」のことで、幽門前庭部付近に好んで生息する、形状がらせん状の菌(バクター)なのでこのような名前になりました。
大きさは約3μm(0.003mm)で、4~7本の鞭毛(べんもう=尻尾のような毛のこと)を持ち、この鞭毛により活発に動き、胃粘膜をおおっている粘液層の中に潜り込み、粘膜の表面にくっついたり、細胞の間に入り込んで増殖します。
通常は強い酸性の胃酸の中では細菌は生きていけませんが、ピロリ菌は自分の周りにアンモニアを発生させ中性領域を作ることができるのでそこで生きていけるのです。感染経路はいまだによく判っていませんが、口から入ることは判っていて、衛生状態の悪いところでは水からも感染すると言われていますが今の日本ではその可能性はほとんどありません。
ただ、接する機会の多い人からの感染はあり得るので、親が感染していると子供の感染率が高くなります。特に感染しやすいのは免疫能力が完成していない乳幼児期と考えられています。日本人成人の約半数が感染していると言われており、感染することによって胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎などの原因になることがすでに研究で証明されていますが、もっと大きな問題は「胃がんのリスク(危険因子)となる」と言うことです。
逆から言えば、このピロリ菌を除去することにより上記のような疾患の改善が見込めるだけでなく、胃がんになるリスクを減らせるということになります。
そのため日本ヘリコバクター学会では2009年1月のガイドライン発表時から、すべてのピロリ菌感染者での除菌を強く勧めてきました。ところが、当初は除菌の適用疾患は「胃カメラで確認された」胃潰瘍、十二指腸潰瘍のみで、2010年から新たに胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後、が追加されたものの、一般的に除菌療法が広がるには全く不自由な状態でした。
しかしこの1月に厚生労働省で行われた専門部会で、除菌による胃炎の治療効果などが確認された結果、除菌に必要な複数の薬剤の適用範囲を広げることが認められました。早ければ3月からということで、何らかの検査でピロリ菌の存在が示され、胃カメラで胃炎が確認されることのみで保険で除菌が受けられるということになります。
治療に関しては抗生物質種類と強く胃酸を抑える薬を組み合わせて1週間服用するのですが、最近は一次治療薬だけでなく、除菌失敗後の二次治療薬も飲みやすいようなセット薬ができましたので、かなりわかりやすくなりました。ただ、上のような比較的目に見えにくいメリットに対して、2種類の抗生剤による下痢や、治療後に逆流性食道炎の症状が強くなる可能性があるなど。副作用ははっきりしていますので、ここにも「充分な説明と同意」が必要になります。
そんな事情ですので、これまでにピロリ菌が検出された方で除菌ご希望の方はまず受診いただいてご相談下さい。過去の胃カメラ検査では保険適用にならない可能性もありますので、あらためて胃カメラ実施の上で保険適用拡大以降に治療につなげたいと思います。どうかよろしくお願いします。